ゼオライトを設計的に合成するためには、その結晶化メカニズムを原子レベルで理解することが必要であり、長年研究が行われてきました。 しかしながら、ゼオライトの結晶化過程に現れるモノマー、オリゴマー、アモルファス、そして結晶そのものの原子レベルの情報が、そもそも不足していたために、ゼオライトの生成メカニズムの研究は根本的に難しくなっています。 本研究では、FAU型ゼオライトを唯一のシリコン源、アルミニウム源としてCHA型ゼオライトを結晶化させる系に注目することで、ゼオライト生成過程の「入力」と「出力」をつぶさに分析することを試みました。 $^{29}$Si固体NMRと高スループット理論計算を組み合わせることで、このFAUからCHAへの合成過程で、原子位置がいかに変化するかを追跡しました。 FAUとCHAに共通して見られる、六角柱型の構造モチーフが保たれる、組み変わることで結晶化するという通説に反し、このモチーフは水熱合成によって壊れてしまうことがわかりました。しかし、FAUを用いないで合成したCHAの原子配列はランダムであったのに対し、FAUを用いた本研究の合成では、エネルギー的な偏りを受けた原子置換現象が起きていることがわかりました。